毎日新聞 2008年05月09日号


きょうと空間創生術きょうと空間創生術
 

自然素材と上手く付き合う

 近年、建築の世界では「サスティナブル(sustainable)」という概念がひとつの流行をつくりだしている。もともとは、「維持できる・継続できる」といった意味であるが、最近、私たち建築家は、長寿命・自然共生・省エネルギー・リサイクル・リノベーションなど、さまざまな手法を通してその持続の可能性を模索 している。今までの資源の濫用、廃棄物の累積といった発展拡大型モデルを見直 し、地球環境の保全と、人間の健康と安全を見据えた持続可能な循環型社会を実 現していく建築のありかたこそが、現代社会において必要とされてきているので ある。

自然素材と上手く付き合う そういった意味において、建物を計画的かつ適正に運用し維持保全することは、 建築に歴史を付与することにもなり、風格が備わって価値を生むこととなると考える。ひいてはそれが社会的にも経済的にも有用な資産となるような価値観やラ イフスタイルを育む土壌となる。私たちが「スペースリサイクル」に取り組むのも、新しい魅力的な再生空間が、そうした新しい価値を生むことを知っているからである。

 写真は先日オープンした、着物リサイクルショップ「着物楽市彼方此方屋(おちこちや)」 「和装を普段着感覚で楽しめる」そんなオーナーの思いを受けながら、リニューアルされた和の店舗空間。開放的な店舗スペースには、珪藻土やコルクタイル、 無垢フローリング、竹といった自然素材を積極的に取り入れ、彩り鮮やかな着物の持つ伝統美との積極的な調和が図られている。

 古くなるほど美しくなる自然素材には、現在の化学材料にはない本物の美しさがある。使い捨ての消費文化を見直し、いいものを長く使い続ける持続型社会こそが次世代に継承すべき美しい文化であると思うのである。

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