毎日新聞 2007年09月21日号


 
「新景観政策最前線」
 今月1日より、ついに京都市の新景観政策がスタートした。かねてより、検討が重ねられ、50年後、100年後の京都の将来を見据えた歴史都市にふさわしい景観を創造するための方法が議論されてきた。三方を山々に囲まれ、平安遷都以来、1200年の歴史を積み重ねてきた古都京都にとってふさわしい景観とはなにか。次の世代に伝えるべき町並みとはなにか。そんな視点から、京都の景観政策は今、大きな転換点を迎えている。

  写真は、三条川端付近より鴨川東岸より西岸を望んだ風景。京都市の景観政策説明会でもよく参考として使用される風景である。自然豊かな鴨川の岸に、先斗町通りの町家が並んでいる。瓦葺きの美しい町家に、格子や川床が彩りを添える。しかしながら、その奥に視点を移すと、河原町通りに立ち並ぶビル群がみえる。形態や色彩はちぐはぐという他はなく、派手な屋上広告物も多数みえる。高架水槽やエアコンの室外機といった機械装置もむきだしのままである。

  従前は、先斗町通には、15mの高さ制限がかけられていた。これに対し、河原町通は45mの高さ制限であったため、このような町家の奥にビルが立ち並ぶといった風景が形成されるに至ったのである。今回の改正で、この地域は、12m・15m・31mとひな壇状になるように高さ制限が強化され、一定の配慮がなされている。他の地域の45m高さ制限も全て改正され、市内における、15階建てマンションの建設は原則禁止されることとなった。また歴史的遺産周辺等における眺望景観や借景の保全を目的とした、新しい施策も注目を集めている。
 そのような状態の中、我々建築実務者が、現在、頭を悩ませているのが、建築確認審査の長期化である。6/20に施行された改正建築基準法と、今回の新景観条例の施行により手続きが煩雑になっている。ともあれ、今回の改正を、ひとつの契機とし、今後の京都にとって望ましい都市の”かたち”とは何かを考えてみたい。京都で育まれた、美しい遺伝子を守り育て 、未来へと引き継ぐ使命が我々にはあると思うのである。


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