毎日新聞 2007年05月25日号 |
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「小川 伊勢善の麩屋格子」 ![]() そんな折、先日訪れた、小川通りの京料理仕出し店「伊勢善」。聞けば、「ろうじ店舗」の麩屋格子は「伊勢善」の格子を再現しているとのこと。麩屋格子とは、麩屋や湯葉屋・豆腐屋によく見られる格子のデザインであり、濡れに強い太い格子が特徴的である。今もこの店には、椹木町にあった「上の店(かみのたな)」市場で使用されていた安政年間(1854-1859)の鑑札が現存しており、その歴史の深さを今に伝える。 京都中央卸売市場が出来るまでは京都には三つの店 (たな)=市場= があり、それぞれ「上の店」「中の店」「下の店」 と呼ばれていた。安土桃山時代より栄えた「上の店」は椹木町通の西洞院から堀川にかけて開かれ、御所における日々の供御を欠かさぬようにと、大正の末頃まで京都最大の生鮮食品の市場として賑わっていた。ちなみに、中の店は今の錦小路市場、下の店は東山区問屋町通である。 写真は、「伊勢善」の料理場部分より麩屋格子を眺めたところ。出格子の内側には、「水場」 「七輪場」等の作業台が据えられ水仕事がよくできるように工夫されている。格子の内部には「無双締まり」という採光と通風を自在に調節できるスライド式の内格子が備え付けられ、西日を上手く板場に採り入れている。写真にも写って下さっている六代目は大正9年生まれの86才。使い込まれた包丁とまな板で、”ぐじ“(甘鯛)を見事に調理する手さばきは今もなお健在である。 |
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