毎日新聞 2006年11月10日号 |
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「あたらしい町家のかたち」 京都市景観・まちづくりセンター(下京区河原町五条下ル「ひと・まち交流館京都」地下1階)では、毎月2回、無料で「京町家専門相談」を開いて、京町家の維持・継承に伴う様々な悩みや相談を受け付けている。私も、専門相談員として専門家の視点から、いろいろなアドバイスを行っている。 相談内容は空き家になっている町家の有効活用の方法や、痛んでしまった古家の適切な改修方法、相続に関する節税対策、借家人とのトラブル等、多岐に渡り、町家に関する悩みや不安の多さには、少し驚かされる。たとえ専門家の立場からみると簡単な事例でも、相談者にとってはそれぞれが深刻で、相談にお答えすると、皆さん一様に安堵の表情を浮かべられる。 よくある事例として、京都市内に多数存在する「再建築不可」という新築の許可がおりない家屋の問題がある。路地奥などに建っていることが多いが、こういう町家は基本的に改修を重ねて使用を続けることとなる。また、老朽化した町家に関しても、同じ場所に同じ町家を建てることが出来ないため、一定の法律の範囲内で耐震補強等の改修を重ねて、使い続けることになる。以前は、住居として改修をしたり、解体をして駐車場にしてしまうことが多かったが、ここ数年、町家の良さが見直され、様々なあたらしい町家の”かたち”が生まれている。 例えば、留学生を対象にしたコミュニティハウスや短期滞在型ホテル。映画館や写真撮影スタジオ。他にも、お年寄りのためのグループホームやフレンチレストラン。伝統産業の展示館に美術館。例を挙げればきりがないが、様々な事例を研究する事により、町家活用のあたらしい可能性が広がっている。新築ができないという、法の規制が逆にいろいろなアイデアを創生し、あたらしい“かたち”を生み出す結果となっている。いわば「必要は発明の母」といったところだろうか。 写真は、木屋町二条の町家再生SHOP。フランス、プロヴァンス地方から直輸入したアロマオイルと京町家という組み合わせもまた、あたらしい”かたち”のひとつではないだろうか。 |
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