日刊工業新聞 2013年08月09日号


日刊工業新聞 2013年08月09日号

日刊工業新聞 2013年08月09日号

△設計を手がけた日本料理店「かみくら」(京都市東山区)

革新の遺伝子
京都企業の挑戦
「いやし・ぬくもり 建築に」 ローバー都市建築事務所


 「都として1100年の歴史を持つ京都が育んできた暮らしの知恵や幸せに暮らす方法を現代的にアレンジして提供できる」。野村正樹社長は自社の特徴をこう表現する。京都の伝統的な建築と現代風の建築を融合させるのが強みだが、これは必ずしもデザインなど外観の話ではない。「京都で長い間大事に培われてきた人間が本質的に持っている『いやし』や『ぬくもり』などを建築に落とし込む」(野村社長)など、顧客の内面にまで踏み込んだ設計にこだわっている。

 京都の伝統的な町屋は自然な風や光で建物内が満たされ、常に四季が感じられるよう設計されている。同社は風通しの良さや人工照明に頼らずに快適な生活が送れるといったコンセプトを訴求し、成長を遂げてきた。

 スマートハウス(次世代環境住宅)に代表されるように、建築もエコが重要なキーワード。だが「大手ハウスメーカーが提案するエコとは一線を画したい」(同)考え。魔法瓶のような機密性の高い建物で、人工的に温度を管理するのではなく「暑いときは暑さを、寒いときは寒さを感じる中で生活を豊かにする」(同)ことに重きを置いている。

 建築に興味を持ったのは高校時代。時はバブル絶頂期で、モダンな建築物が次々と建設された。こうした建築物を見て、野村社長は「人々の夢を具現化して、そこで生活を楽しんでもらえる。これを職業にできたら」と考えるようになった。大学は法学部に進んだが、建築家へのあこがれはますます強くなり、卒業後に建築を勉強するため他大学に編入。その後建築事務所で修行し、30歳で自分の城を持った。

 2010年に東京事務所を設立、顧客数の拡大にも力を入れている。「京都の良さを東京というフィルターを通して全国に発信する方がアピールしやすいだろう」(同)との狙いから東京進出を決断。将来は海外進出も視野に入れる。

 海外について野村社長は「だいぶ先の夢物語」と控えめだが「建築の大先生方はかなり海外でも活躍されているし、大きな目標ではある」と話す。そのためには国内の足場固めが不可欠。事業拡大に向け、10年以内に社員数を現状比約6割増の20人に増やす方針だ。

 社名の「ローバー」は幼いころから続けていたボーイスカウトの精神が由来。ボーイスカウトには大人になると、職業を通じて社会貢献する考え方があり、これを「ローバーリング」と呼ぶ。社名に負けないよう「企業として単に足元だけを見るのではなく、建物という器を提供しながら人々の幸せを形づくる仕事をする」(同)のが当面の目標だ。とはいえ、建築家は60歳でようやく一人前と言われる世界。野村社長の挑戦はまだ始まったばかりだ。


▽社長=野村正樹氏 ▽京都市上京区堀川通今出川上ル東入実相院町145-4、075-451-5777 ▽従業員=8人 ▽事業=住宅・事務所の設計 ▽設立=00年(平成12年)2月

http://j-net21.smrj.go.jp/watch/news_tyus/entry/20130813-02.html


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