2006年の介護保険法改正により、新しく創設された、「小規模多機能型居宅介護施設」従来型の姥捨山的大規模集団施設型ケアへの反省から、「地域密着」、「家庭的な雰囲気」「その人らしさを尊重する個別ケア」と言ったキーワードをコンセプトに、地域密着型介護サービスの拠点として整備されている。これまで「施設」で行ってきた高齢者介護を「在宅」で行うための支援施設として、「通い(デイサービス)」「泊まり(ショートステイ)」「訪問(ヘルパー派遣)」など様々な機能を小規模かつ地域密着とすることにより、いわば介護支援のコンビニエンスステーションとしての役割を担っている。 そんな新時代の介護施設を、築100年の町家で実現する。従前の介護施設ではなし得なかった、伝統木造和空間の持つ”ぬくもり”と”安らぎ”を最大限感じることのできる施設であることが求められた。 「うちに帰ってきたような雰囲気づくり」をめざし、設計施工のハード面はもと より、スタッフのサービス・ケア体制といったソフト面に至るまで様々なアイデ アが加えられた。 縁側空間は日だまりの空間として拡幅され、ウッドデッキを増設することによりゆるやかに内部と外部を仕切るよう計画。通り庭の部分は、施設利用者の展示空間として再生し、作品発表の場としてあかるい雰囲気を創生。眠っていた箱階段は、利用者を迎え入れる内玄関のディスプレイとして再生。上座敷は活動の場として整備され、古き良き時代を感じさせる床の間や書院のほか、光と風を感じる中庭と共に明るいスペースへと変貌した。他にも、フローリング部分には床暖房を敷設し、。点字ブロックの代わりになぐり加工のフローリングを使用するなど随所にアイデアが挿入され、築100年の京町家は最先端の介護施設へと生まれ変わった。 人はだれでも、可能な限り、住み慣れた地域や自宅で、ながく生活していたいと思うことであろう。住み慣れた地域から離れて老後を過ごしたくない、慣れ親しんだ我が家を終の住み処として暮らしたいと思うのはごく自然な考え方である。従来の「施設介護」での画一的で生活感の希薄な介護のあり方よりも、在宅介護により、家族の支えによって「人間らしく」、最期まで自分らしい暮らしをができることのほうが幸せなのではないだろうか。 「長い旅をして目的地にたどりついた時、あなたの席が用意されていたら・・・誰かと出会った時、その人が心の中にあなたのための場所をあけていてくれたら・・・出会いの喜び、くつろぎ、安心、そして命の輝きもともに喜びあえる。 忘れかけている何かを、あなたの場所をここで見つけてほしいのです」 (施設案内書より)
(野村)
■上座敷から庭園方向をみる 憩いのワークスペースとして再生
■工事前の上座敷の様子 長年放置され陰鬱な雰囲気
■広縁は日だまりの空間として拡張 荒廃した庭園も再整備
■ミセの間のべんがら格子越しに通りを望む 天然木フローリングに床暖房を設置
■通り庭はディスプレイ空間として利用 古井戸は飾り棚に