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小規模多機能型居宅介護施設 松原のぞみの郷

 
内玄関より坪庭をのぞむ 光と風を感じる有機的な空間
■内玄関より坪庭をのぞむ 光と風を感じる有機的な空間

京都市内中心部150坪の敷地にたつ、築100年以上の京町家。
豪商の町家に多く見られる、間口6間2列型の表屋造り。
過去の華やかであった時代の面影はもはやそこには存在せず、
荒廃した家屋と庭がただ残っていた。

そんな廃墟と化した京町家を憩いと安らぎの空間へ。
和空間の素晴らしき再生を夢見て、「小規模多機能型居宅介護施設 松原のぞみの郷」の改修は始まった。


2006年の介護保険法改正により、新しく創設された、「小規模多機能型居宅介護施設」従来型の姥捨山的大規模集団施設型ケアへの反省から、「地域密着」、「家庭的な雰囲気」「その人らしさを尊重する個別ケア」と言ったキーワードをコンセプトに、地域密着型介護サービスの拠点として整備されている。これまで「施設」で行ってきた高齢者介護を「在宅」で行うための支援施設として、「通い(デイサービス)」「泊まり(ショートステイ)」「訪問(ヘルパー派遣)」など様々な機能を小規模かつ地域密着とすることにより、いわば介護支援のコンビニエンスステーションとしての役割を担っている。

そんな新時代の介護施設を、築100年の町家で実現する。従前の介護施設ではなし得なかった、伝統木造和空間の持つ”ぬくもり”と”安らぎ”を最大限感じることのできる施設であることが求められた。
「うちに帰ってきたような雰囲気づくり」をめざし、設計施工のハード面はもと
より、スタッフのサービス・ケア体制といったソフト面に至るまで様々なアイデ
アが加えられた。

縁側空間は日だまりの空間として拡幅され、ウッドデッキを増設することによりゆるやかに内部と外部を仕切るよう計画。通り庭の部分は、施設利用者の展示空間として再生し、作品発表の場としてあかるい雰囲気を創生。眠っていた箱階段は、利用者を迎え入れる内玄関のディスプレイとして再生。上座敷は活動の場として整備され、古き良き時代を感じさせる床の間や書院のほか、光と風を感じる中庭と共に明るいスペースへと変貌した。他にも、フローリング部分には床暖房を敷設し、。点字ブロックの代わりになぐり加工のフローリングを使用するなど随所にアイデアが挿入され、築100年の京町家は最先端の介護施設へと生まれ変わった。

人はだれでも、可能な限り、住み慣れた地域や自宅で、ながく生活していたいと思うことであろう。住み慣れた地域から離れて老後を過ごしたくない、慣れ親しんだ我が家を終の住み処として暮らしたいと思うのはごく自然な考え方である。従来の「施設介護」での画一的で生活感の希薄な介護のあり方よりも、在宅介護により、家族の支えによって「人間らしく」、最期まで自分らしい暮らしをができることのほうが幸せなのではないだろうか。

「長い旅をして目的地にたどりついた時、あなたの席が用意されていたら・・・誰かと出会った時、その人が心の中にあなたのための場所をあけていてくれたら・・・出会いの喜び、くつろぎ、安心、そして命の輝きもともに喜びあえる。
忘れかけている何かを、あなたの場所をここで見つけてほしいのです」
(施設案内書より)

(野村)

 

所在地: 京都市下京区松原通堀川西入
主要用途: 福祉施設(小規模多機能型居宅介護施設)
事業主: 社会福祉法人 カトリック京都司教区 カリタス会
設計: (株)ローバー都市建築事務所 担当 森垣真穂
施工: 都市建設株式会社 担当 小西健嗣
構造・構法: 主体構造・構法 木造伝統工法
規模:
地上2階建
最高高7.36m
敷地面積 504.55 u(152.32坪)
建築面積 211.56 u(63.87坪)
延床面積 312.07 u(94.21坪)
1 階 211.56 u(63.87坪)
2 階 100.51 u(30.34坪)
改修工事費 3600万円
工程:
設計期間/ 2006 年01 月〜 2006 年10 月
工事期間/ 2006 年11 月〜 2007 年03 月
敷地条件:
商業地域 準防火地域
道路幅員 市道(松原通) 南側5.5m
外部仕上げ:
屋根/ 日本瓦葺
外壁/ しっくい塗 焼杉板
開口部/ 木製建具
広縁/ 赤松一枚板(既存転用)
内部仕上げ:
玄関の間:
 
床/ たたみ t60
壁/ じゅらく壁
天井/既存竿縁天井(栂)
キッチンルーム:
 
床/ 耐熱ならフローリング t15.0
壁/じゅらく壁
天井/既存竿縁天井(栂)
居間:
 
床/ たたみ t60
壁/ じゅらく壁
イベントスペース:
 
床/ 天然杉一枚板 ワックス掛 t30
壁/じゅらく壁
天井/既存大和天井(杉板)
設備システム:
空調 冷暖房方式/ ヒートポンプ式エアコン
給湯 給湯方式/ ガス式一部電気式
給排水 給水方式/ 直結給水
排水方式/ 公共下水道放流
主な使用機器: 住宅設備機器/TOTO・INAX・カクダイ
照明/ENDO・TOSHIBA・DAIKO


■外観写真
京都の商家の雰囲気を現代に
継承奥まで見通せるアプローチ


■蔵内部
パーティスペースとして多彩な
プログラムが開催可能


■上座敷から庭園方向をみる
憩いのワークスペースとして再生


■工事前の上座敷の様子
長年放置され陰鬱な雰囲気


■広縁は日だまりの空間として拡張
荒廃した庭園も再整備


■ミセの間のべんがら格子越しに通りを望む
天然木フローリングに床暖房を設置


■通り庭はディスプレイ空間として利用
古井戸は飾り棚に

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