山紫水明の自然に囲まれ、千二百年余の歴史を持つ京都。伝統に育まれた豊かな文化の中で、私達は日々生活している。そんな恵まれた環境の中、京都デザイン・京都ブランドの伝統美を探求し、新しいものを生み出す研究施設として、また、京都の品格を世に広める発信基地として、ものづくりの町、京都西陣紋屋町に「紋屋町研究所」を開設。 改修施工は京都大徳寺御用達 山中工務店 作庭には嵯峨鳴滝竹村造園六代目庭師 竹村勲氏に協力を依頼。研究実践の場である京都設計オフィスとの連携を図りながら、社会に愛される都市建築の創生に更に努めるべく、日夜研究を重ねている。 荒廃した築130年の長屋再生計画。壁はプリント合板で隠蔽され、畳は腐食が激しく、建物自身にも傾斜が認められた。以前の坪庭はトタンで隠され、鬱蒼とした光の入らないいわば座敷牢のような状態。改修計画においては、油圧ダンパーによるジャッキアップを施し、水平補正をおこなった。本来の伝統美を取り戻し、新しいライフスタイルを提案する体験空間としての機能も共存するよう設計をおこなった。 私たちが忘れかけている伝統の美しさ。華やぎの中にぬくもりがあり、柔らかな陰影が古きよき時代を思いださせる。じゅらく壁と漆喰壁に囲まれた、静寂の空間。 焼杉板の地には女竹をあしらい、石灯籠をアイポイントに。モミジ・馬酔木・南天・柊を配し、小さいながらも美しい坪庭を作庭。襖紙には、”唐長”製「京唐紙」を使用し、濃紺の和紙とのコントラストを楽しみながら、襖の持つ本来の美を体感できるよう計画。照明計画においてもレトロモダンを演出し、暮らしの美に華を添えるよう配慮した。カリン製パーケットフロアにおかれる、応接セットには、「カリモク60Kチェア」をセレクト。60年代のいわば日本のミッドセンチュリーを代表する逸品。シンプルで品質がよく、流行に左右されないベーシックなデザインは、40年以上も変わらないフォルムで愛され続けています。 小さいながらも狭くはない、広がりのある空間を実現。縁側の向こうにある京都の暮らしの美を体感しながら、日々創作活動に盈進していきたい。
(野村)
■研究所内部 改装前 壁はプリント合板で隠蔽され 鬱蒼とした薄暗い雰囲気
■玄関部分 玄昌石と白川砂を間接照明により照らす 格子とのコントラストが美しい
■ピンスポットによる飾り棚装飾 左手には唐紙「影日向枝桜」貼の襖がみえる
■モミジ・馬酔木・柊・南天をあしらった坪庭 作庭は鳴滝竹村造園六代目 竹村勲氏による