基本設計開始から3年半という、稀にみる、熟成させた設計期間を経て、お食事処「かのこ」は完成した。正月の初詣、期間中は不眠不休の24時間営業となる、伏見稲荷表参道エリア。その一瞬のハイシーズンを見据えた客席・厨房レイアウトが不可欠となる設計であった。また、什器備品を格納するバックヤードスペースも膨大であり、限りあるスペースの配分に、細心の留意が求められた。 今回の改装を機会に、昼の定食の他に、夜間の宴会も手掛けていきたい。そんな思いを実現するためには、従前のうどん屋のイメージを払拭する、先進的であり、かつ、和みの空間であることが条件となった。伝統的な配色を踏襲しながら、随所に差し色を取り込み、落ち着きののなかにも、華やぎのあるカラーコーディネートを軸に、計画はすすめられた。 露地空間を彷彿とさせる、エントランスアプローチをくぐり抜けると、格子が彩りを添える、客席スペースが目の前に展開する。ペンダントライトの揺らめきを、体感しながら、中庭部分に目をやると、枯山水式の石庭が目に留まる。天然木なぐりフローリングを貼り詰めた、板座敷部分には、間接照明を積極的に使用し、トータル的に和を感じる華やぎの空間として設計をおこなった。コンパクトでありながら機能的に考えられた厨房からは、新メニューが考案され、従来のうどんを中心としたメニュー構成から和風割烹へと様変わりをすることとなった。 客席数も今回の改装を機に増加し、ハイシーズンにおける、売上の増大に多大に寄与する結果となった。店舗デザインにおける設計の重要さを改めて認識する、いい機会となった。生まれ変わった、今後の「かのこ」に期待したい。
(野村)
■客席内部 古井戸の井桁はテーブルに転用
■改修前 客席内部
■客室内部 格子と間接光が織りなすコントラストを演出
■男子便所 暗闇に浮かぶようなイメージ
■2階座敷 落とし掛けは既存の二股サルスベリを転用
■改修前 店舗外観
■店舗外観 シンプルなフォルムの中に伝統美をおとしこむ
■店舗玄関アプローチ 石畳の奥にアイポイントとして装飾棚