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ローバー都市建築事務所の設計物件や、弊社代表の野村正樹が執筆するコラムなど、
雑誌や新聞に掲載されている情報のご紹介をいたします。

日経アーキテクチュア No.1098
〜SpecialFeature 特集 大競争時代の宿泊デザイン〜

日経アーキテクチュア No.1098 表紙

Case3 
重伝建地区の空き家再生 古民家の宿を地域のハブに

季樂 飫肥 合屋邸(宮崎日南市)

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地方創正や観光復興の切り札として期待される古民家の利用。
政府も全国レベルでこうした動きを後押ししている。
宮崎日南市で4月に開業した宿泊施設は、 過疎地での取り組み事例として注目を浴びる。

 
日経アーキテクチュア No.1098
日経アーキテクチュア No.1098

 1977年に九州初の重要伝統的建造物群保存地区に選定された宮崎県日南市の飫肥地区。江戸時代の城下町としての地割りを今もとどめる。この4月、保存地区内にある築100年超の古民家が、高級宿泊施設に生まれ変わった。中に入ると、黒ずんだ柱と梁が目を引くモダンな空間が広がる。古民家再生ビジネスを手掛けるKiraku Japan(東京都港区)が開業した「季樂 飫肥 合屋邸(おうやてい)」だ[写真1]
 合屋邸は、通りに面して細長い平屋建ての伝統木造建築だ[写真2]。長屋門としての起源を持ち、江戸時代は中級藩士の住居として使われたが、空き家となっていた[写真3]
 改装に当たり、壁を取り除き、リビングとキッチン、ダイニングをひと続きの空間にした。当時のかまどをそのまま残したほか、囲炉裏や土間を設けることで、城下町ならではの文化や風土を体感できるようにした。延べ面積は100㎡以下で、用途変更に伴う確認申請手続きは不要だった。

[写真1]囲炉裏を設けてイベント活用も可能に
合屋邸の内観。改装前には囲炉裏はなかったが、改装工事で追加した。天井を撤去し、屋根裏を照らすスポットライトを入れ、もともとの柱や梁を堪能できるよう演出した。設計を担当したローバー都市建築事務所の野村正樹代表は、「残すべきものは残して、建物のもつ力を現代に合わせた形で引き出した」と語る(写真:59ページまで特記以外は小森園豪)

[写真2]飫肥瓦で屋根をふき替え
合屋邸の外観。「屋根を飫肥瓦でふき替え、外壁を修復した。印象が変わるので、塗料には気を配った」(ローバー都市建築事務所の今井健雄氏)

[写真3]築100年超の古民家
改修前の内観。築100年超で、空き家となっていた。和室から玄関を見たところ(写真:Kiraku Japan)

「そこで暮らす体験」を提供

日経アーキテクチュア No.1098 合屋邸は、旅館業法上の簡易宿所として運営している。宿泊は1日1グループ限定の貸し切り。自由に使えるキッチンや調理器具などを備え、「そこで暮らすかのような体験」ができるのが売りだ。清掃やチェックインなど運営の一部は、地元の飫肥城下町保存会が担っている。

 改装設計は、200件以上の町家や古民家再生の実績を持つローバー都市建築事務所(京都市)、施工は久保田木工(日南市)が手掛けた。空間プロデュースとデザイン監修を乃村工芸社(東京港区)が担当した。

 乃村工芸社開発本部開発第一事業部開発1部の山野恭稔プロジェクトリーダーは、「街のハブになるよう、宿泊施設の在り方から検討した。板の間をセミプライベートな空間としてイベント性を高めた。例えば地元の人が料理をつくって提供するといった体験ができる」と語る。

 内装や備品には力を入れた[写真4]。「日本の良い空間の中で、日本の良いモノに触れてもらうというのがコンセプトだ」(山野プロジェクトリーダー)。飫肥石や飫肥スギなど地元素材を活用。地元の陶芸家による食器などを取り入れた。重視したのは水まわり。かまどを囲むようにキッチン設備を配置して新旧を対比。浴室には、コウヤマキを使った浴槽を設置した。

[写真4]「日本の良い道具に触れる」がコンセプト
内装や備品には力を入れた。寝室に2人、奥の和室に4人泊まることができる。黒い天井に合わせて、和室の畳も黒く加工して暗めの仕上げとした(上)。改装に当たって水まわりを移設。もともとあったかまどを挟んでキッチンをつくり、最新のデザイン家具を置いた(右上)。浴室にはコウヤマキの高級浴槽を設置した(右下)

空き家解消と観光復興を両立

日経アーキテクチュア No.1098 古民家を宿泊施設に再生した背景には飫肥地区が直面する問題がある。飫肥に訪れる観光客は年間約20万人。最近は海外クルーズ船が油津港に寄港し、外国人旅行者も増えている。一方で、地区内に空き家が年々増加。老朽化が目立ち、観光への悪影響が懸念されていた。
「飫肥のポテンシャルは大きい。古民家を活用した飲食店や物販店あるが、宿泊施設がほとんどなく、地域活性化に十分結びついていなかった。滞在時間を延ばすには宿泊施設が必要だと考えた」と、Kiraku Japanのサンドバーグ弘代表は語る。

 日南市は2015年に、飫肥地区の「まちなみ再生コーディネーター」を民間から募集。選ばれたのがKiraku Japanの徳永煌季氏だった[写真5]。徳永氏は現地に常駐し、事業を進めてきた。地域内の活用されていない古民家をリサーチし、所有者など関係各所との交渉を重ねた。「多くの候補があったが、簡単に使える空き家はほとんどない。建物の状態が良くて、かつ低コスト、スピーディーに事業を進められるものを探し出した」。

 Kiraku Japanは保存地区内で合屋邸と同時に「季樂 飫肥 勝目邸」も開業した。市が所有する築約60年の空き家を改装した[写真6]。2棟の宿泊施設は市が進める飫肥地区のまちなみ再生事業の第1弾となる。

 Kiraku Japanは民間からの資金と市の補助金で計約1億2000万円を調達して2棟の改装費に充てた。徳永氏はオープンを皮切りに、古民家再生の次なる展開を見据えている。

[写真5]まちなみ再生事業に民間人登用
日南市飫肥のまちなみ再生コーディデーターを務める徳永煌季氏。現地に常駐して、飫肥地区の空き家対策に取り組む。地元の商店のメニューの多言語化やオンラインマーケティング、商品開発も手掛けている。17年1月に日南市と包括的連携協定を結んだ乃村工芸社とともに、地域活性化に挑む

[写真6]タイプの異なる「勝目邸」
築約60年の空き家を改装した勝目邸。設計者はローバー都市建築事務所、施工者は宮川工務店。木造平屋建てで、延べ面積98.8屐I瀉呂論亞世砲茲辰動呂泙譴討り(右上)、縁側に置かれた椅子にくつろいで、県指定の名勝の庭園を楽しめる(左下)。リビングには対面型のキッチンを配置した(下)。Kiraku Japanは異なる施設タイプで運営に関するデータを蓄積し、今後の展開に生かす

■季樂 飫肥 合屋邸
■所在地:宮崎県日南市飫肥8-1-48
■主用途:簡易宿所
■地域・地区:重要伝統的建造物群保存地区
■前面道路:3.5m
■敷地面積:469.42㎡
■建築面積:99.32㎡
■延べ面積:99.32㎡
■構造:木造
■階数:平屋建て
■耐火性能:その他建築物
■基礎・杭:石場建て
■高さ:最高高さ5.2m、軒高:3.675m、天井高:2.0〜3.75m
■発注者:Kiraku Japan
■空間プロデュース・デザイン監修:乃村工芸社
■設計者:ローバー都市建築事務所
■設計協力者:構造設計Maru工房
■施工者:久保田木工
■運営者:Kiraku Japan、飫肥城下町保存会
■設計期間:2015年1月〜16年12月
■施工期間:2016年12月〜17年4月
■開業日:2017年4月25日
■客室数:1部屋(1棟貸し)
■宿泊価格帯(1泊):2万9000円〜(大人2名)

 
(株)ローバー都市建築事務所


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