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PHP研究所(編) トップが綴る 我が人生の師



PHP研究所(編)
トップが綴る 我が人生の師

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「自分の信じる道を、ただまっすぐに」
(株)ローバー都市建築事務所 野村正樹

 「自分の信じる道を、ただまっすぐに進めばいい。」このひと言が、現在の私の人生を支えている、わが師、安枝英、先生の言葉である。

 学生時代、同志社大学法学部に在籍していた私は、当時、労働法を専攻していた。俗にいう、労働三法(労働基準法、労働組合法、労働関係調整法)について研鑽(けんさん)を深めながら、フレックスタイムや年棒制、労使協定等について議論を重ねていた。三回生、四回生の二年にわたり「労働法」のゼミ指導に熱心に当たってくださったのが、安枝先生である。

 そんな「安枝ゼミ」のスローガンは、「よく学び・よく学び・よく遊べ」であった。「よく学び、よく遊べ」では、どうしても遊びに比重を置きがちなので、遊びの二倍、勉学に励むようにとの教えであった。また、先生は「会社や企業というものは、所詮個人の集合体である。個人の集合体である以上、最後は人のつながりがものをいう」とも言われていた。

 バブルの余韻がいまだ残る1992年、法学部四回生の春、安枝先生に、来年進むべき就職進路を決定するにあたり、相談した。その時期、友人をはじめとする同僚は、次々に金融機関やメーカーなど一流企業への就職を決めはじめており、当時、母子家庭でもあった私は、早く安定した会社に就職して母親を安心させることも必要であると考えていた。ただ、三回生の春より独学で夜間に勉強を始めていた建築設計への夢についても未練があり、身の上話を聞いていただいた。親身に相談にのってくださった先生からいただいたひと言が、冒頭の「自分の信じる道を、ただまっすぐに進めばいい」であった。

 そのひと言以降、私は、建築設計の道をひたすらに進み、26歳で無事一級建築士試験に合格し、29歳で一級建築士事務所を創業することができたのである。

 残念なことに、恩師安枝英、先生は、2001年、享年59歳の若さで急逝されてしまったが、今でも安枝ゼミの学友は、毎年、先生を偲んで「安枝会」を開催し、皆で先生の教え「よく学び・よく学び・よく遊べ」を守りつづけながら、絆を深めている。