毎日新聞 2008年04月25日号


きょうと空間創生術きょうと空間創生術
 

懐かしいのに新しい

 京町衆の叡智(えいち)が詰まった京町家。その構造は伝統軸組工法と呼ばれる独自の構造 様式を持っている。これは、現在のコンクリート基礎や筋交いを使用する在来工 法とは異なり、基礎には石(一つ石、かづら石)を用い、貫や差し鴨居(かもい)・人見梁(はり)といった水平の部材で地震力を軽減しているのがその特徴である。東寺の五重塔のように建物全体の柔らかさと粘り強さで地震に耐える構造を持っており、現在の建築基準法における耐震基準の考え方とはその性質が異なる。

京町屋と耐震補強 例えば、継手・仕口といわれる柱や梁の接合部分は、建築基準法では釘(くぎ)やボルト による金物緊結が標準であるが、京町家は「ほぞ組み」と呼ばれる、木材同士の組み合わせによりその強度を発揮している。また、基礎部分と建物の結合も、在来工法では頑丈に繋ぎ止められているのに対し、京町家の建物は石の基礎に置かれているだけである。これは建物と地面が繋がれていないことにより、地震時にはその間にズレを生じさせ、一種の免震構造としての役割を果たすことになるのである。

  時を経て老朽化した京町家の改修にあたっては、そんな京町家独特の特性を考慮しながら、適切な耐震補強計画をたてていくことが極めて重要となってくる。い わば、"和食には和の調味料"、"柔には柔"といったところであろうか。

 写真は先日改修した丸太町のいえ。建物内部には「荒壁パネル」という土・古紙・木などの天然素材からなる呼吸する耐震壁を2ヶ所に配置。玄関横には「耐力格子」という荒組みの格子を採用し地震時における建物全体の揺れの吸収を目指した。

 伝統的な様式を活かしながら様々な現代の新しい技術を取り入れる。そんな知恵の重なりともいうべき工夫が、安心・快適な暮らしへとつながるのである。

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