毎日新聞 2006年9月29日号



格子が奏でる都市のリズム

 京都の代表的な風景として「格子」の並ぶ街並みを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。祇園新橋や花見小路に代表される「格子」が並ぶ風景に出会うと、京町家の端正で凛とした美しさをあらためて認識する。

 京町家の表構えをしつらえる重要な要素である格子は、防犯上の機能だけでなく、ブラインドサッシのような役割も併せ持っている。外部より暗い内部は見えにくく、内部より明るい外部はよく見えるという特性をうまく利用し、暮らしに上手く取り入れている。特に京都の格子は、他の地域と比べて繊細なつくりとなっており、細かな木を縦と横に組み合わせた洗練されたデザインとなっている。現存のような形が成立したのは江戸中期といわれているが、その種類は多彩であり、家業によって、糸屋格子・米屋格子・炭屋格子等、一定の意匠が決まっている。またそれぞれの意匠に理由があるのも面白い。

 代表的な糸屋格子は、繊維関係の職種の家業に見られ、太・細2種類の竪子を規則的に並べる親子格子と呼ばれる形式となっている。また細い格子の上部は9寸ほど切り取られ採光を兼ねた切子となっている。切子4本は織屋であり、3本は糸屋・紐屋、2本は呉服屋というようにその数は決まっている。必要とする明るさにより、採光率が調整されているのである。

 米屋格子とよばれる格子は、座敷牢のような太い竪子で作られ、非常に丈夫な意匠となっている。これは重い米俵をあてても壊れないように考えられているのと同時に、昔は飢饉になると米騒動が起こる。暴徒から米を守るためにも、頑丈な格子が必要だったのである。炭屋格子も頑丈に作られてはいるが、格子間の間隔が非常に狭い意匠となっているのが特徴的である。いわば火薬庫のような炭屋は、火災時には、強烈な火柱が吹きあがる。頑丈なつくりですきまを細くし、表通りに火がでないよう配慮しているのである。

 写真は、先日設計した「そらをのぞむいえ」。格子の持つ精神を定義し、都市にリズムを与える要素として、現代的に再構築。空間創生の楽しみはこんなところからも発見できる。
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