* 2006年第29巻 通刊1369号 ▼ 掲載記事
【 B-ing 】


西陣織の職人たちが住み慣れた家屋

 京都・西陣 京町家
瓦屋根と紅殻格子が続く町並み



築80年の町家の再生に泣いて喜んだ家主
築80年の町家が悲鳴をあげていた。
ローバー都市建築事務所の代表取締役・野村正樹氏は、その家を見たときのことを振り返る。
「織物工場だったのですが、床は腐り、天井には穴が開いている。
家主さんは『どうしようもない』とあきらめていました」

同社は通常の住宅や店舗設計のほか、京都・西陣を中心に全国の町家再生を手がけている。
西陣に事務所を開いて6年。 この地域で再生した町家は20軒になる。前述の町家も十分再生できると判断し、改修に取り組んだ。 「外観はなるべく残し、内観は木のぬくもりを生かしつつ住みやすさを考慮して改装しました。工事後、泣きながら喜んでくれた家主さんの顔が忘れられません」

さまざまな交流を通じて「先人の知恵」を残し伝える
野村氏が生まれ育った西陣。一時、離れていたが大学卒業後に戻ったとき、町家はマンションや駐車場に変わっていた。原因は職人の高齢化と町家の老朽化。家主は修理・維持に費用のかかる町家を壊し、土地を売却したりマンションや駐車場に変えてしまう傾向にあった。「でも、電気配線などのインフラを整えたり、内装を現代風にするなど、工夫すれば町家は今も使える。家主さんにはそういった知識を持ったうえで、 再生するか壊すか判断してほしいのです」

また、西陣で町家を貸したい家主と入居希望者との間を仲介したり、地域の情報を発信する『町家倶楽部』にも「町家を残したい」という思いから参画。 この会を通して、他府県や海外で街づくりに携わる人々と交流を図っている。 「年輪の偏りを読んで木材の使用場所を考えたり、釘を使わずに建てるなど、町家には先人の技術が詰まっているんだと、工事のたびに実感します。 そんな先人の知恵を次世代に伝えるのは、京都を拠点に活動する当社の使命だと思っています。